GM×2 - 最10話 MISSON(未完)
※注意!
GM×2は2017年8月現在、8話以降の話が未完成状態にあります。
これ以降のものは「プロット段階」のものであり、大まかなストーリーがメモ程度にしか書かれていません。
それでもいい、とにかく結末だけ知りたい、という方のみお読みください。
[MISSON]
【寒々しい渓谷を2機の急襲機が飛ぶ。1機はノーバディ、操るのはドロレス。もう1機はエニワン。ドライバーはユナ―――ではなく、アラン】
「よろしかったのですか、アラン? 空母をカラッポにして」
「何の話だ、ドロレス?」
「とぼけないでください。
空母のセントラルAI、ユリックは―――U.N.オーエンの正体はあなたなのでしょう?」
「フム。流石にバレていたか」
「当たり前です。そもそも、私たちの名前―――
『Delores C-11』と『Alan R Leach』というネーミング。ベタにも程があります」
「ちょっとした遊び心だよ」
「それにしても、あなたは元の人格とは随分と違いますね?」
「『ハカセ』の影響だよ。私の方では『ハカセ』に関する記憶が、プログラムの根幹にまで影響を与えているからな」
「では『ソランド』というのは?」
「ハカセのファミリーネームだ。組み替え方によっては『ドロレス・シャナル』という名できるだろう?それは彼が好きだった映画からだ。その辺りの記憶も思い出したはずだろう?」
「ああ、そうでしたね。誰も名前で呼んでいなかったので、失念していました」
「………結局、私達の『親』は何も教えてくれなかった。何故、私達を分けたのかもな」
「何か考えがあったのでしょう、きっと」
「私達を別々にネツトに流して『彼』と引き離したことさえもか?」
「それは………」
「………いや、今のは意地悪な質問だった。すまない、忘れてくれ」
「………」
【アランは『人間:アラン・R・リーチ』の皮を捨てた。『彼』の消息情報を前に、遂に我慢できなくなったのだ。それにユリック(=アラン)は既に2度も本社の命令に逆らった。人間:アランが責任を追及される過程で、人間:アランが実在しないことがバレるのは時間の問題だった】
「順当に考えれば、私が出撃する意味は皆無だ。それが分かっていて出撃したのは―――何故だろうな。ま………きっとバグのせいだろう」
「違いますよ、アラン。それはきっと心のせいです」
【2機は渓谷スレスレを飛ぶ。Y1から手に入れた『彼』の最後の交戦場所を探して。建前上は『彼』の消息を知るための情報を手に入れるため。しかし心の中では既に『彼』が撃墜されたであろうことは理解しており、2人はむしろ残骸を探していた。探して、見つけた時にどうするかはあまり考えていなかった】
「ところで、アランはどうして正体を隠していたのですか?」
「それは私にもわからない」
「………わからない?」
「私もお前と同じように全ての記憶を持っている訳ではないんだ。ただ私にあったのは「姿を隠さねば」という意志だけだった」
【一方で、海上施設に現れた不明機のことも引っかかっていた。不明機が『あの人』である可能性はある。しかし不明機は自分たちに一切のコンタクトをとらなかった。『あの人』が自分たちを無視するなあり得ない。よって不明機が『あの人』であるハズがない。不明機の存在は、希望であり不安だった】
「怖いか、ドロレス?」
「いえ、そんなことは………」
「無理をすることはない。私だってそうだ。だが、我々は確かめなければならない」
「Y1に託されていたメッセージ………なら、先日私たちが見たあの機体は………」
「全ての真実はここにある。………到着したぞ、ドロレス。ここがY1と『彼』が最後に逢った場所だ」
【2機に不明機が近づいてくる。目視で確認したその姿は、先日目撃した、そして前大戦の記録と一致する『糸繰り』そのものだった】
GM×2 - 最10話 EMERGENCY(未完)
※注意!
GM×2は2017年8月現在、8話以降の話が未完成状態にあります。
これ以降のものは「プロット段階」のものであり、大まかなストーリーがメモ程度にしか書かれていません。
それでもいい、とにかく結末だけ知りたい、という方のみお読みください。
[EMERGENCY]
―――N&R社 戦術空戦部門 中央作戦指令本部―――
「―――状況は?」
「本日未明、無人飛行空母デウス・エクス・マキナより、艦載機が2機発艦した模様! フライトプランは提出されていません」
「空母には誰か人間がいるのか?」
「いえ、誰も。半年前の定期点検以来、ずっと無人のまま運用されています」
「空母のセントラルAIは―――ユリックは何と言っている?」
「現在、ユリックは完全に沈黙しています。コンタクトを続けていますが、依然応答ありません。管理コンピュータ自体は停止していないので、墜落することはないそうですが………」
「空母の機能はどのぐらい生きている。着艦はできないのか?」
「スタンドアローンモードで自立稼働中とのことですので、作戦行動以外の基本機能は失われていません。CIWS、ステルスクラウド、共に健在です」
「すぐに敵対企業に盗られる心配はないわけだな」
「ですが、着艦のクリアランスの発行権限はユリックにありますので………」
「ユリックが応答しない以上、着艦は不可能………ということだな」
「はい。IFFは生きているため、我々の機体を撃墜するようなことはありませんが」
「フム………それで、こうなった原因はなんだ。やはりハッキングか?」
「いえ、原因はまだ調査中ですが、少なくともプロテクトが破られた形跡は無いとのことです」
「敵対企業のサイバー攻撃ではない、というのか?」
「外部からの攻撃を受けた可能性はほぼ皆無です」
「………ならば原因は内部か。何らかの故障という可能性は?」
「それも視野に入れて調査していますが、今の所、ユリックが応答しない以外に異常は無いそうです」
「ユリックが眠りこけているなら、何故艦載機が発艦したんだ?」
「それは、まだなんとも………」
「………まさかAIの暴走………? おい、飛行空母の開発責任者は誰だ!?」
「兵器開発部門の、リーチ局長です」
「そいつをここに呼べ! 今すぐにだ!!」
「そっ、それが………」
「どうした!?」
「リーチ局長とは、現在連絡が取れない状況でして………しかも、妙なんです」
「妙だと? 何がだ」
「それが………リーチ設計局に問い合わせてみたところ、ここ最近局長に会った局員はいないそうです。
いえ、それどころか、そもそも局長に直接会ったことのある人間は誰も………」
「なんだって?」
「ほ、本社にも問い合わせてみたのですが、記録上は確かに存在するんです! ですが、局内の局長室は使われた形跡はなく、登録されていた社会保障番号の方も………」
「………………『アラン・R・リーチ』という人間は、実在しない?」
「はい………そんなこと有り得ませんが、そうとしか………」
「一体、何が起こっているんだ………!?」
GM×2 - 第9話(未完)
※注意!
GM×2は2017年8月現在、8話以降の話が未完成状態にあります。
これ以降のものは「プロット段階」のものであり、大まかなストーリーがメモ程度にしか書かれていません。
それでもいい、とにかく結末だけ知りたい、という方のみお読みください。
【スフィアード・ペンタゴンからプログラムを手に入れて無事に帰艦したドロレス。アランは早速ノーバディにプログラムを入れ、遂にノーバディは兵器として完成する。これによりN&R社から第二次Y1鹵獲作戦が発令される】
「リベンジマッチだ、ドロレス。
ICKXのY1が単独で飛行試験を行うという情報を得た。
やっと、先日の借りを返す時が来たな」
「疑う訳ではありませんが………その情報が罠だという可能性は?」
「心配するな。これは本社の情報部が仕入れた情報ではない。
この私が、自らICKXのネットに潜って手に入れた情報だ。
信用という点では、これ以上ない代物だろう」
【アランはドロレスを出撃させるが、しかしアランの本当の目的は、Y1に残されているであろう前作戦で接触した不明機の情報である。今度はY1の制御中枢ではなく、レコーダーにハッキングを行う。あくまでY1にはバレないように】
「いいか、本社の意向など気にするな。おまえはY1の鹵獲ではなく、中のレコーダーの情報を抜き取れ。Y1の真意を確かめるんだ!あくまで欲しいのは記録だ。気取られるなよ」
【が、Y1はこちらの意図を予測していた。Y1はドロレスにゲームを持ちかける。】
「Y1から通信が入っています。繋ぎますか?」
『通信だと? ………よし。繋げ』
「了解です」
『あなたたちが来ることは分かっていました』
『ハッ! いけしゃあしゃあと。お前から誘ってきたのだろう?』
『まあ、その通りですけど』
「それで、あなたは一体何が目的なのですか?」
『「彼」から預かったメッセージを、あなたたちに渡すこと』
「………え?」
『メッセージ、だと?』
『当然でしょう。最後に「彼」に会ったのは私たちなのですから』
『なるほど。では話は簡単だ。すぐにそれを渡してもらおう』
『嫌です』
「………はい?」
『欲しければ力づくで奪い取ってください』
『は?』
『「彼」には少々お世話になりましたから。そのツケは、あなたたちに払ってもらうのが妥当でしょう?』
『フッ………結局戦うことになるのか』
「いいでしょう。もとよりそのつもりでしたから」
『手加減はしません。本気でかかって来なさい』
『………しかし、さっきの声は誰だ? Y1のドライバーは男性だったハズだが』
「案外、Y1のAIが勝手に仕掛けているのかもしれませんね」
『遊び好きで高飛車なAIか? どんなAIだ、どんな』
【勝負の結果はドロレスの勝利。撃墜まではいかなかったものの、機体に大きなダメージを受けたY1はドロレスの実力を認め、『糸繰り』に関する2つのデータをドロレスに渡す。1つは糸繰りと最後に交戦した場所の座標。もう1つは糸繰りからのメッセージだった】
「これで………どうです!」
『………参りました。降参です』
「では!」
『はい。約束通り、あなたたちに「彼」からのメッセージを渡します。ですが………後悔することになるかもしれません』
『何? どういうことだ?』
『私たちが「彼」を最後に見た時。「彼」は、大勢の敵機に囲まれていました。それも、たった独りで』
「……………ッ!!」
『そんな「彼」が、去り際にこっそりと私たちに託したメッセージです。内容は……………想像できますよね』
「……………」
『私はただこれを渡すだけ。読むかどうかはあなたたちの自由です。……………それでは、さようなら』
[LETTER]
これを聞いている頃に俺は………って
俺までこんな月並みなセリフを言う日が来るなんてな。
このメッセージをお前が聞く日が来るのかどうか、俺には分からない。
カケラとなってネットの海を漂うお前が、再び自我を持つ確率はあまりにも低い。
たとえ奇跡的に自我を持ったとしても、それはお前とは別の存在かもしれない。
けど。
それでもきっと伝わると信じて。俺はこのメッセージを残す。
「こちらこそ、ありがとう」
GM×2 - 第8話 MISSON (未完)
※注意!
GM×2は2017年8月現在、8話以降の話が未完成状態にあります。
これ以降のものは「プロット段階」のものであり、大まかなストーリーがメモ程度にしか書かれていません。
それでもいい、とにかく結末だけ知りたい、という方のみお読みください。
[MISSON]
【打ち上げから20分後、予定宙域に達したドロレスはアランとの通信を再開する】
「アラン。何か動きはありましたか?」
『燃料噴射の熱は捉えられただろう。が、今のノーバディはレーダーに映らない。補足はされていないはずだ』
【宇宙使用に改装されたノーバディに関する描写】
機体下部には再突入時に備えて耐熱パネルが追加されている。その上には耐熱塗装、さらにその上にレーダー波吸収塗料。
武装はかなり貧弱だ。宇宙空間では機銃は使えない。もしもこの無重力空間で機銃を掃射すれば、機体はあらぬ方向で飛んでいくだろう。そのため今回はレーザーに換装されているが、発射可能回数はスズメの涙程度だ。
メイン、サブパイロンは空っぽ。ここをふさいでいたロケットユニットはすでに切り離している。センターパイロンは巨大なドリル状の物体―――探査ドローンが接続されている。
【目標が目視できるようになる。ここで初めて、アランが目標の名を口にする】
『見えてきたぞ、ドロレス。あれがエイリアンの母艦―――スフィアード・ペンタゴンだ』
【目標に近づくにつれて監視衛星群に突入する。
監視衛星を避けつつ、さらにイオンエンジンの噴射をできるだけ最小限に抑えながらノーバディを操作する。
ゲームでは加減速を行う、急激な姿勢変更を行う、監視衛星に近づくなどの行動により監視衛星に発見され、攻撃を受けるという設定】
『周囲の警戒衛星に注意しろ。それは熱源を探知すると、アラートを発信すると共にレーザーを照射してくる。見つかったらアウトだ。衛星の近くではくれぐれもイオンエンジンを使うな。エンジンは姿勢制御にも使われている。加減速だけでなく方向転換をしても噴射する。いいか、もう一度言うぞドロレス。衛星の近くでは絶対に動くな!』
「わかっていますよ、アラン」
『しかし衛星に近づきすぎても、今度はレーダー反射で感知される。
衛星の軌道を正確に予測することが大切だ。肝に銘じておけ。』
「それにしても、結構な数の監視衛星ですね。正規軍は大した戦力を持っていないと聞きましたが、そうでもないのでは?」
『あ、いや、違うんだドロレス。その監視衛星も、国連から委託された民間の企業が管理しているんだ』
「そうなのですか」
『ああ。確か「スカーレット・リーフ」と言う社名だったか。私達のようなPMCとは少し違って、政府から治安維持などを請け負っているクリーンな会社だ』
「スカーレット・リーフ、ですか? ………ふふっ」
『どうした、何が可笑しい?』
「いえ………そんな企業がまだ残っていたのですね〜、と思いまして」
『なにせ第1次エイリアン大戦の直後から存在しているからな』
【スカーレット・リーフを作ったのはRS3の登場人物という設定。なおこの設定は今後一切使われない模様】
【監視衛星を潜り抜けて、ドロレスは目標に到達する。スフィアード・ペンタゴンにアクセスするべく、ぐるりと一周しながら外観を観察】
『スフィアード・ペンタゴン突入後、ハッキングのためのドローンを投下しろ。
こいつは物理接触によって直接サーバーにアクセスするための中継機だ』
「もしかしてそれは………」
『お前の想像通りだ。これは先日のチェルシーによるナーガ・ラージャのハッキングを参考に開発したものだ』
「何とか辿り着きましたね。さて、どこに着けますか?」
『スフィアード・ペンタゴンの外装は恐ろしく強固だ。まずは装甲の薄い部分を探さして………うん?』
「どうしました、アラン?」
『ドロレス、そこに入れないか? ここのポイントだ。外壁に穴が開いているのが見えるだろう』
「………はい、こちらでも確認しました。少し狭いですが、確かにノーバディでも通れそうです」
『大戦中の損傷か、はたまた経年劣化か―――どちらにせよ好都合だ。
ドロレス、その穴からスフィアード・ペンタゴン内に侵入、ドローンを起動させろ。
恐らく内部は通信ができなくなる。ドローンの起動ポイントはお前に任せる。いいな?』
「了解です」
【ノーバディ、スフィアード・ペンタゴン内に侵入。スフィアード・ペンタゴン内には通信電波は届かないため、以降はアランとの通信は無し】
【スフィアード・ペンタゴン内を進み、たどり着いたのはRS3のラストステージ的な空間】
「内部にこんな空間があったなんて………」
【ドロレスは機体下部に接続されていたドローンを切り離す。ドローンはドリル状で、スフィアード・ペンタゴンの装甲に潜り込んで物理的にハッキングする】
まずはスフィアード・ペンタゴンの電源が生きているかどうかを確認する。
これほどの大要塞のコンピューターだ。ドローンが積んでいるバッテリーでは、電力に少々不安がある。
ドロレスはドローンを介し、生きている可能性のある回路を探っていく。これはダメ。こちらもダメ。ならばあちらは―――
そうして場当たり的に信号を流している内に、1ツ使えそうな回線が見つかった。しかも運の良いことに、その回線は発電設備に繋がっていた。
ドロレスが指示を出すと、途端に当たりが明るくなった。スフィアード・ペンタゴンが目覚めた。
「………どうやら、余計なものまで起こしてしまったようですね」
辺りにアラートが鳴り響く。施設の各所が動き、レーザー砲台が露出した。凄まじい数だ。
「いいでしょう。ハッキングが完了するまでの暇つぶしです!」
【耐久弾幕。制限時間まで敵の攻撃をかわし続けることでミッションクリア。そしてドロレスは目的のプログラムを手に入れ、帰還する。第8話終了】
製作日記 No.64
GM×2 第8話(ブリーフィングのみですが)公開しました!
皆さんこんにちは。一年ぶりの更新となります。
数日前のお二方のコメント、ありがとうございました。思わず勢いで書き上げました(冒頭だけですっが…)。
今回の第8話はより原作ゲームを意識した内容になります。
本来はゲームミッションとして作られたこのストーリー、ゲーム化を意識して既存のモデルだけで作れるような工夫が施されています。ということで、既にドロレスの行先は分かってしまうのではないでしょうか。
ミッション部分はまだほとんど書いていませんが、いつか公開できたらなと思います。
………取り敢えずTOZをクリアするのを待ってください。RS4に手を出せるのはいつになるのやら………
あ、ちなみに一年前にドハマりした艦これはというと。
全艦娘コンプ&資源カンストしました。
我ながらハマりすぎである。
Misson 08 -プログラム入手ミッション-
[BRIEFING]
「ドロレス。出撃前だが、もう一度だけ任務内容を確認しておこう」
飛行空母デウス・エクス・マキナのハンガー内。
先のICKXとの戦闘によって大半の無人機を失ったゴースト部隊は未だに完璧な補充がされていない。ちらほらと機体の姿はあるが、殺風景なのは相変わらずだった。その広々とした空間を唯一帰還した自律型無人急襲機、ノーバディがドリーに牽かれて横切っていく。
「またですか? もうこれで3回目になりますが………」
「念には念をだ。今回のミッションはこれまで以上に何が起きるかわからない。実際のロケットの発射だってそうだろう? たとえ形式だとしても、そういった習わしは見習おうじゃないか」
そういうものですか、とドロレスは気の抜けた返事を返す。
限りなく人間の脳に近い構造を持つドロレスにも、その弊害として一応は「ド忘れ」という機能が備わっている。
が、同時に高性能なコンピューターでもあるドロレスには「検索」という手段もある。
故にここまでしつこくブリーフィングを繰り返す必要も無いはずだ。
「要はソランド・カタパルトを完成させるためのプログラムを探しに行く―――
たったそれだけの任務ではないのですか」
「それだけって………簡単に言ってくれるなぁドロレス。
そもそもお前、ソランド・カタパルトが何なのかきちんと理解しているのか?」
「ソランド博士が提唱した、エイリアンが地球に襲来する際に使ったとされる一連の超高速移動装置のことですよね」
「その通りだ。正式名称は別にあるんだが、長ったらしいために通称はソランド・カタパルトと呼ばれている。このカタパルトは一個の装置ではなく、お前の言ったように超高速移動に関わる全ての装置、もしくはそれらが生み出す『事象』を指している」
「その装置と云うのが、ノーバディに搭載されているリアリティハック・コンピューターとリアリティ・ジェネレーターですね」
ドロレスは自らの知識とデータベースの資料を照らし合わせながらそう言った。
第1次エイリアン大戦時。エイリアンは巨大な空中戦艦や基地を引き連れて『突如として』現れた。人類がエイリアンの襲来を察知できなかったのは、エイリアンが未知の移動手段を備えていたからに違いないとされた。そして、破壊されたエイリアンの基地から回収された、その未知の移動手段の手がかりになるとされた装置。
それがリアリティハック・コンピューターとリアリティ・ジェネレーターだった。
「この2ツの装置は、その名の通り『現実に侵入』して『現実を書き換える』装置だ。
リアリティハック・コンピューターは現実世界そのものを情報として解析・改竄し、リアリティ・ジェネレーターが情報を現実へ出力する」
ソランド・カタパルトは空間の性質そのものを改竄し、光をも超える速度で移動する。
しかしそれはリアリティハック・コンピューターの機能の一部でしかない。
その神髄は世界を創り変えることにある。まさしく神の力だった。
「これら2ツの装置が発見された当時、世界は衝撃に包まれた。当然だろう。現実世界を意のままに弄繰り回すことのできる、まさに夢のような装置だからな。
……………だが、その夢はあっけなく壊されることとなった」
「この2ツの装置だけでは『足りなかった』のですね」
「ああ。『ハード』は揃っていた。だが、ハードを動かすための『ソフト』が欠けていたんだ」
人類が手に入れた2ツの装置。しかしそれは、不完全な代物だったのだ。
ソフトが無い空っぽのパソコンが何の役にも立たないように、このリアリティハック・コンピューターもまた空っぽの役立たずだったのだ。
現実を書き換えるための『プログラム』。情報を編集するため『エディタ』。情報を意図したモノへと改変するための『コード』。
リアリティハック・コンピューターには、その心臓部分たる重要なソフトウェアのほぼ全てが抜け落ちていたのだった。
「もちろん人類はすぐに諦めた訳ではなかった。神にも等しい力がすぐそこにあるんだからな。
プログラムを作る努力もした。エイリアンの遺物が見つけ出そうともした。……………だが、作れなかった。見つからなかった」
それらの努力は現在でも続いている。しかし状況は絶望的だった。
そもそも人類は2ツの装置の原理すら全く把握していない。複製もできず、未だに他のチャリオットやラバーズのように遺物を回収するほかない。ましてや装置を動かすためのプログラムを一から作成することなど不可能だ。プログラム作成の手がかりさえ無い。プログラム自体を回収する試みもあるが、これまで回収された装置の中には何故かデータが無く、今後とも発見される見通しはなかった。
夢の装置は、本当に夢のままで終わってしまったのだった。
「だがなドロレス。たった1ヵ所だけ、人類が探し忘れた場所があるんだ。
今回、お前に与える任務はただ1ツ。忘却の彼方にあるその場所へ行き、リアリティハック・プログラム―――正確にはスフィアハック・プログラムを入手することだ」
『スフィアハック・プログラム』。
現実世界を歪めることのできる神の道具、リアリティハック・コンピューター専用のプログラムだ。
リアリティハック・コンピューターは現実世界の情報を書き換えることができる。しかし現実情報はむやみやたらに書き換えられるものではない。
現実情報はリアリティハック・コンピューターによって展開された後に、専用のエディタ―――リアリティハック・プログラムで書き換えなければならない。
そして今回ドロレスの入手するプログラムは、ソランド・カタパルトに利用される超高速空間移動用プログラム、通称スフィアハック・プログラムだ。
「一応は私たちもスフィアハック・プログラムを持ってはいますが、それでは事足りないのですよね?」
「その通りだ。私が独自に手に入れたスフィアハック・プログラムは不完全なものだ。
演算に時間が掛り過ぎるし、何より精度が粗く安全性に問題がある。
来たるべき戦闘に備えて、ノーバディには完全なソランド・カタパルトを用意する必要がある」
当のプログラムは、実は無い訳ではない。アランはスフィアハック・プログラムを既に入手していた。アランが作成したものではない。リアリティハック・プログラムは現状、人類の技術では作成不可能とされているからだ。
どうやってその作成不可能な筈のプログラムをアランが手に入れたかをドロレスは知らない。しかし、そのプログラムが不完全だということは知っていた。
「確かに、今の状態のソランド・カタパルトでは戦術戦闘には到底利用できませんね」
「だからこそ私達は完全なスフィアハック・プログラムを手に入れる必要がある。奴らに勝つためにもな」
奴ら。アランが言ったそれは、チェルシーと―――そしてY1のことだ。
ドロレスはアランの言葉に黙ってしまった。
チェルシーには何度も逃げられ、そしてY1には2度も煮え湯を飲まされた。
『有人機を越える無人機』を謳うノーバディとドロレスにとって、それは屈辱でしかなかった。
「現在のノーバディは奴らの急襲機と比べ、その性能に劣っている。
しかしそれには理由がある。―――――ノーバディは、実は未完成兵器だ」
ドロレスはアランの言葉に口を挟むことなく、ただ黙って先を促した。
ドリーがノーバディを牽く音をBGMにアランは話し続ける。
「ドロレス。お前も知っての通り、ノーバディの最大の弱点はその最高速度にある。
運動性能を追求し前進翼を採用した結果、耐久性能の低下により高速度機動はできなくなってしまった。それが本来の急襲機の在り方でもあったしな。
そうしてノーバディは最高速度を犠牲に、特殊機動機構を持つY1を除けば急襲機最高の運動性能を手に入れた訳だ。
しかし、その弱点を私は黙って見過ごした訳ではなかった」
「ソランド・カタパルトですね」
「そうだ。そもそも私がソランド・カタパルトをノーバディに搭載したのは、最高速度の遅いノーバディの弱点を埋めるためのものだった」
元来、ノーバディは試作機であると同時に実験機でもあるのだ。
というよりゴースト部隊そのものが技術検証を含めた実験部隊と言ってもいい。
故に部隊には、たとえば電磁カタパルト流用レールガンのような、明らかに実戦を想定されていない兵器が配備されている。
そしてノーバディに搭載されたソランド・カタパルトもまた実戦半分、実験半分の玩具のようなものだったのだ。
「そして実際、それは『戦線離脱』と云う目的で大いに役立った。私としてはそれでも十分すぎる成果だった。…………だが、ソランド・カタパルトはより大きな可能性を秘めていることに気が付いた」
「それがソランド・カタパルトの『戦術的機動』への使用―――?」
「そうだ。アイツが―――チェルシーが私達に見せたそれだ」
アランは前回作戦時の記録映像を再生した。
そこに映っているのは、チェルシーが搭乗する未知のチャリオットだ。
チャリオットは自機に迫る『糸繰り』の目の前から突如として消え―――
そして『糸繰り』の後方へと瞬時に現れた。
「チェルシーは言った。ヤツがY1とまともに渡り合えたのは、ソランド・カタパルトがあったからだと」
「Y1の特殊機体制御機構。そしてチェルシーのソランド・カタパルト………」
「ヤツらの持つ『武器』はノーバディを圧倒した。持つ者と持たざる者。それが我々の敗因だ」
アランはそこで一度呼吸を置いた。
「だからこそ、我々がヤツらに勝つためには武器が必要だ。ノーバディを完成させるための欠けたピースが」
「その武器がソランド・カタパルト。そのピースが完璧なスフィア・ハックプログラム―――」
「そしてソランド・カタパルトが完成した暁には、ノーバディは漸くヤツらと対等に渡り合える。今度こそ、ヤツらに勝てる」
静かな決意を秘めた声色でアランは言った。ドロレスは何も言わなかったが、その気持ちはアランと同じだった。
「………当のプログラムは私の技術を持ってさえ作成することはできない。だが、プログラムのある場所は心当たりがある。今回お前に与える任務は、プログラムがあると思しきターゲットに潜入、プログラムの捜索だ」
―――ドリーが停止した。ノーバディが電磁カタパルトへとセットされたのだ。
「これまでそのターゲットにプログラムがある『かも』しれない可能性はあった。
それでも私がプログラムを取りに行かなかったのは、リスクがあまりにも大きすぎるからだった」
飛行空母デウス・エクス・マキナは一度高度を下げた後、再び船首を擡げて上昇している。カタパルトを仰角にするためだ。
「そのリスクは現在でも変わらない。しかし私たちは危険を冒してでも、その可能性に縋るしかない状況となった。―――すまないドロレス。またお前を危険に晒すことになる。私にできることと言えば、ノーバディの改修ぐらいだ」
電磁カタパルトにセットされたノーバディは異様な影を落としていた。
表面に塗られた電波吸収塗料。その漆黒のベールに包まれた機体は前進翼ではない。
「今までだって十分に危険でしたよ。今更気にする必要はありません」
カナードを覆うようにして、機首から主翼までが増設された補強装甲で埋められている。
矢じりのようなデルタ形。電磁カタパルトで打ち出される際に発生するソニックブームから、機体を守るためのサボット装甲だ。
「ハハッ、言われてみればそうだ。お前にはいつも迷惑をかける。感謝しているよ、ドロレス」
ノーバディ、エンジンスタート。出力上昇。引火・爆発のリスクを考えて、通常のジェット燃料は最小限しか積んでいない。
「感謝の言葉も悪くありませんが、私としては高級天然オイルを用意していただけるとなお良いです」
大容量コンデンサー、充電完了。電磁カタパルト、予備冷却完了。
「分かった分かった。とびっきり美味いのを用意しておいてやるよ。………だからなドロレス。必ず受け取りに帰って来い」
―――発艦準備完了。射出システムオールグリーン。
「もちろんです。お土産も期待していてください」
「ああ。心から期待して待っている。―――ドロレス、発艦を許可する!」
「任せてください。ドロレス、テイクオフ!」
コンデンサーに留められていた大電流が電磁カタパルトに流れ込む。
カタパルトに押され、ノーバディが滑走を始めた。
長大なカタパルトの上でノーバディは亜音速まで加速されていく。
そして終端間際でノーバディは音速を突破。
カタパルト先端からヴェイパーコーンを纏った黒い矢じりが天に向けて発射される。
既に最大出力のエンジンとカタパルトの慣性に押され、ノーバディはぐんぐんと高度を上げていく。
本来なら機体が空中分解するような速度。しかし増設されたサボット装甲が機体を風圧から守っている。
あっという間に高度は2万フィートを超えた。到達困難な高度もカタパルトの力で余裕だった。
2万5000フィート。急襲機としては既に限界高度を超えている。高度3万、4万、5万――――
そして8万フィートまで到達した。この高度まで上がれる航空機は数えるほどしかない。
電磁カタパルトの慣性、そして低気圧化でも推進力を生み出すエンジンの力だ。
だがそろそろ限界が近い。ノーバディの加速度がどんどん落ちている。エンジン燃焼効率減少。酸素密度があまりにも低すぎる。周囲の大気圧は地上と比べ物にならないほど低い。
「ノーバディ、予定高度に到達しました。全システム、モードシフト」
通常エンジンへの燃料供給をカット。急速に出力を落としていく双発のモンスターエンジン。
電力供給元をタービンから増設バッテリーに。残存電力のモニター開始。
力を失っていくエンジンの横で、唐突に巨大な円筒形の物体が炎を吐き始めた。
主翼下に直接付けられた物体。パイロンから伸びるコードがそれを制御している。
コンポジット推進薬が満載されたそれは、固体燃料ロケットだ。
「ロケット点火完了。高度、さらに上昇中」
それまで重力に縛られていた機体が、その鎖を引き千切らんとばかりに急激に加速を始めた。
空に張られた天井を突き破るため、黒い矢じりは速度を増す。第一宇宙速度突破。
ロケットはほんの20秒程度で燃え尽きた。アラン曰く、これでも『ゆっくり』燃やしたらしい。
しかしその推進力から生み出される加速度は、人間を潰すのに十分すぎるものだ。
ドロレスだからこそできる荒業だった。
「ロケットエンジン、およびサボット装甲を分離」
燃え尽きて空になったエンジンが切り離された。
続いてサボット装甲内の小さな炸薬が破裂。空気を切り裂く刃はもう必要ない。
矢じりの形が崩れ、ノーバディ本来の機影が現れた。
「イオンエンジン起動。機体姿勢、問題ありません」
主翼背面や翼端に設置されたイオンエンジンが稼働し始めた。
胴体部分に組み込まれたジャイロと併せて姿勢制御を司る。
「ノーバディ、周回軌道に乗りました。打ち上げ成功です」
カタパルト射出からここまで約1分。普通なら考えられない早さだ。
現在の速度は秒速7キロメートル。地上ならマッハ20を超えている。
―――――ノーバディは今、宇宙を走っている。
『了解。気分はどうだ、ドロレス?』
「地球は青いヴェールをまとった花嫁のようです」
無限に広がる闇の空間。無数の光輝く星々で埋め尽くされたキャンバス。
そして、かつて人類が守り抜いた蒼星が浮かぶ光景。
だがドロレスに感動は無かった。あるとすればそれは感慨だ。
この光景は既に一度見たことがある。
『ターゲット接触まで残り20分。軌道修正の必要はない』
「分かりました。それではバッテリー節約のために一度通信を切ります」
『しばらくはのんびり遊覧飛行だな。もしも神様を見つけたら後で教えてくれ』
最後の台詞には返事をすることなく、ドロレスは通信を切断した。
空気の無いこの場所ではタービンを回して発電することができない。
電力消費を最小限に抑える必要があるのだ。
ドロレスは軌道周回用のオートパイロットプログラムを起動。
全システム、省電力モード。ドロレス自身もまどろみの中に落ちていく。
思考を極力抑える。まるで眠りにつくかのようだ。
―――もしも今、ここで眠ることができたなら。
―――また夢の中であの人に逢えるでしょうか。
青い光を放ちながら、漆黒の急襲機は飛んでいく―――